セイラムは驚きました。
なんと広い学校なのでしょう。
今日から此処で魔女さんの身の回りのお手伝いをするのです。
妹のサブリナの目はらんらんと輝いています。
この優秀な妹なら難なく仕事をこなせるでしょう。
セイラムは不安を覚えました。
ー僕に何ができるんだろう。
『ようこそ、我が家へ』魔女は言いました。
『お前達の役割は、私のサポートだよ』
『具体的におっしゃって下さい』 サブリナはすぐさま聞きました。
『ふむ』魔女は言いました。『まずは、全てのドアと窓を開け閉めする呪文を覚えてもらおうかね?』
『ええ?』セイラムはびっくりして声をあげました。『呪文なんて僕、使えません!』
『ほほほ』魔女はわらいました。『黒猫が何を言ってるんだい? 魔法を使えない黒猫など居ないよ。生まれた時から授かった能力を信じるんだね』
翌朝より呪文の勉強が始まりました。
サブリナは100近くある呪文を3日で完璧におぼえました。
セイラムは3日で10個しか覚えられませんでした。
『なるほど。それではサブリナ、お前は私の執事になってもらおう。スケジュール管理、戸締り、頼んだよ』
『はい!』サブリナは扇型のシッポをぴんっと立てました。
『セイラムには、私の身の回りの世話を頼もうかね。私は寝坊をしたり物を置き忘れたりするから、それらを手伝っておくれよ』
『は・・はい』セイラムは静かに答えました。
次の朝、セイラムは魔女を起こしに行きました。
『魔女さん、朝ですよ。起きてください』
魔女は起きません。
セイラムは何度も声を掛けたり、魔女をゆり起したりしましたが、一向に魔女は起きようとしません。
セイラムは困りました。
ーどうしよう。こんなお寝坊さんだなんて・・・
それを黙って見ていたサブリナは剛を切らしてやって来ました。
『セイラム! 何をグズグズしているの?さっさと起こしなさい!魔女さんが仕事に遅れるわ!』
『で…でも、魔女さん起きなくて・・・』
サブリナは呆れ果ててため息をつきました。
『見てて』
するとサブリナは壁をタタンと駆け上り、寝ている魔女のミゾオチ目掛けて着地しました。
ドスン!
『うわああ』魔女は悲鳴をあげました。
サブリナは魔女のお腹の上からサッと降りて言いました。
『時間です。起きてください!』
『サブリナ、お前、もっとましな起こし方は無いのかい!』
『寝坊をする方が悪いのです。さっさと起きて朝食を召し上がって下さいね』
サブリナは颯爽とダイニングルームへ向かいました。
魔女はブツブツ言いながらも起き上がり、サブリナについて行きました。
ーえ?え?え?
セイラムはびっくり仰天のまま、部屋に1匹取り残されるのでした。
続く。